2003年12月27日土曜日

毬子嬢のこと

主水くんは観念した。
こうなることは、はじめからわかっていたのだ。
確かに毬子嬢の洗髪は上手い。
広い浴場内をわざわざ探して彼女に頭を洗ってもらう人も少なくないのだ。
中にはお金を渡そうとする人もいたが、毬子はそれを嫌がる。
「こちらこそ洗わせてくれてありがとう。このお金は、次にここへ来るためにとって置いてちょうだい。そうしたらまた私が洗ってあげられるでしょ」
などと言ってやんわりと断っている。
本当に人を洗うのが好きなのだ。若い子が好きなのもまた、真実である。
主水くんがそんな毬子嬢に目をつけられないわけがない。
いくら上手に洗ってもらえるとは言っても、主水くんはトウのたった子供であるので
他人に身体を触られるのはどうにも具合が悪いらしい。