2003年12月6日土曜日

思いがけなく遠かった阿礼の住む街のこと

立ち上がった阿礼は主水くんが見上げるほど大きかった。
掃部くんは彼の腰までしかない。
「では参ろう」
阿礼はゆっくり歩きだした。
阿礼の家は思いがけなく遠かった。
ションヴォリ氏の家とは逆の方角で、主水くんは初めて踏み入る土地だ。
すっかり日が暮れ、掃部くんは主水くんに背負われて寝てしまった。
 やがて隣街に到着した。
ションヴォリ氏一行にとっては珍しい光景が広がっている。
夜空の下は白く輝いていた。あまりの明るさに掃部くんも目を覚ました。
背の高い建物の窓がひとつひとつ青白く光っている。
暖かい揺らめく明かりはどこにも見られない。
「アレック、ずいぶん遠くに住んでいたのですね」
阿礼はニヤッとした。