さて、ションヴォリ氏の楽しみは銭湯に行くことである。
もちろんションヴォリ氏の家にはバスルームもあるが、ションヴォリ氏曰く「家の風呂と銭湯は別物」だそうだ。
これは主水くんも大好きで、しょっちゅう二人は連れだって風呂に行く。
この日もションヴォリ氏はそわそわと主水くんがくるのを待っていた。
「おはようございます、博士」
「モンドくん、モンドくん風呂に行かんかね」
「もちろんお供します、博士」
この日ションヴォリ氏は桃色の服を着ていた。
主水くんはクローゼットから桃色の手ぬぐい、桃色の浴衣を出し、
物置から桃色の洗面器と桃色の石鹸箱、桃色の櫛を持ってきた。
物置にはションヴォリ氏の服に合わせて色とりどりの洗面用具が揃えてあるのである。
「まだかね、モンドくん」
ションヴォリ氏は落ち着きがない。
「用意できましたよ、博士」