懸恋-keren-
超短編
2003年3月15日土曜日
め
明月の晩、冥土への旅が始まった。
こころは誠に明澄である。明鏡止水とはよく言ったものだ。
とりあえずは冥王星を目指せばよい
と死の瞬間に名僧が囁いたので、星々を愛でながらいこう。
ところが冥王星にはあっという間に到着してしまった。
目下迷霧の中である。
目星はない。明答は、瞑想によってのみ得られるのだろう。
生前の面倒をひとつづつ滅却していかなければならぬ。
名実ともに冥界人になるには、しばらくかかりそうだ。
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