リュックを背負った竜は流木に掴まって、リアス式海岸に辿り着いた。
竜を見付けたのはリアリストのリスだった。
筋骨隆々の竜はリスに尋ねた。
「理想郷というのはここですか?」
律儀なリス、「いいえ、違います」と喨喨とした声で言い放った。
竜が蓼蓼となったのは一目瞭然だった。
気を取り直した竜は流木にしがみ付き離岸した。
流行歌を口ずさみ、おのれの旅情を慰めながら。
背中の小さなリュックに
リベラルな理想郷への夢を詰めて。
リスはそれを稜稜たる視線で海岸を見下ろし見送った。
彼の有名な竜宮は理想郷ではないのか……。