2019年1月3日木曜日

万物の色相

その男女は、笑顔で何事か言うている。今まで聞いたことのある言葉とは似ても似つかない音声だった。錆びた歯車が軋むような発音だが、男女が親切で穏やかな人柄だろうということはわかり、安堵する。しかし、たとえ十年この町に留まっても、挨拶すらできるようになるとは思えない。

鳥は、どうやらこちらの言葉は訳してくれるが、向こうの言葉は訳してくれないらしい。
一方的に要望を喋り、赤い鳥が高らかに宣言するのを繰り返した。

二人は青銅色のビルの地下へと案内してくれた。
暖かい部屋だったが、何もかもが青銅色だった。家具も、壁も。
皿も、スプーンも。スープも、パンも。
赤い鳥だけが、赤かった。