どこか、暖かいところで、温かい食べ物を食べたかった。
このままでは病気になってしまうという危機感があった。
「鳥よ、温かい物が食べたい」
だが、赤い鳥は何も答えない。
赤い鳥は自分の意志は言うが、まともな会話が成立するわけではないと気が付くには、少し時間が掛かった。ちゃんと、通りの人々に聞こえるように質問しなければ。
「え~」
と言うやいなや、赤い鳥は叫んだ。
「こちらに御座します、消えず見えずインクの旅券を持つ旅のお方は、温かい食べ物を欲しておられる!」
この大仰な言い回しが赤い鳥独特なものなのか、人々にはどのように聞こえているのか、わからないことばかりだ。
だが、鳥の一声を聞いて、夫婦らしき二人組がこちらに向かってきた。顔貌が違っても、彼らが笑顔であることは、わかった。