2018年12月9日日曜日

鳥の役割

赤い鳥は、肩にとまった。そのまま付いてくる気のようだった。
どうやら、通訳をしてくれるらしい。追い返す理由はない。

育った街は捨てたに等しい。消えず見えずインクが消えない限り、あの街には戻れない。
この街も、望んで来たわけではない。だが、せっかくだから、少し探索してみようと思う。通訳もいることだから。

人々の視線を感じながら歩き、振り返ってあの鳥籠を見た。鳥も鳥籠も真っ赤だと思っていたが、今にも朽ち果てそうな青銅色だった。

改めて周りを仰ぎ見ると、建物の色も、道も、銅が朽ちかけたような青緑だった。
見慣れない姿の人々の服装も同じ色で、肌も青白い。それに気が付いた途端。ひどく寒気が襲ってきた。

肩の赤い鳥を胸に強く抱いた。
「旅のお方よ、少し力を緩めてはくれぬか?」
赤い鳥の甲高い声が、青銅色の街に響く。