青銅色のスープとパンは、温かくはあったが、味はよくわからなかった。
よくわからなかったけれど、寒かったし、空腹だったし、不味くはなかったから、心底ありがたかった。
たぶん、この町では、ほかの家へ行っても、高級レストランへ行っても、やっぱりこんな朽ちかけた青緑色した食事が出てくるのだろうと思う。
「御馳走様でした。助かりました」
と、頭を下げる。すかさず、赤い鳥が「消えず見えずインクの旅券を持つ旅のお方は『馳走になった』と仰っている!」と歌うように言った。
夫婦は満足そうに頷いた。少し、この見慣れぬ容貌の人の表情がわかるようになってきた気がする。