振り払っても湧いてくる思考を連れて歩き回っていたら、音楽ホールと思われる大きな建物が現れた。
この奇怪な音の街にどんな音楽があるというのだろう。
近づいてみると、ちょうどコンサートが開かれるところだという。
気分転換にはちょうどいいかもしれない。
ホールの座席は、とても座り心地が良い。舞台もよく見える。立派なホールだ。
楽団員が楽器を抱えて入ってきた。
ヴァイオリン、ビオラ、コントラバス……クラリネット、フルート……トランペット、トローンボーン、ホルン……シンバル、ティンパニー、……
一つひとつ確かめたが、見知らぬ楽器や奇妙な楽器は見当たらない。
演奏が始まった。ティンパニーが激しい水音を鳴らす。滝のようだ。
続いて、金管楽器が雄々しく叫ぶ。肉食獣の声で。
シンバルが激しく叩かれると、座席が揺れるほどの雷鳴が響いた。