どこまで落ちても地面にぶつかることはなく、ふいに持ち上がる感覚がした。
そして全身が濡れる感覚の後、一瞬、意識が遠のいた。
「風呂にでも出たか」と思って体を持ち上げ、あたりを見回すと、どうやら噴水から噴き出したらしいとわかった。見上げるほど高く水が吹き上がっている。
赤い鳥はやっぱり肩にいた。一緒に飛び降りた人は、いなかった。
噴水の池を出て、歩き始めた。よく晴れて暖かい。乾いた風が心地よく、濡れた身体もあっという間に気にならなくなった。
前の街と違って、色彩がおかしいということはなかった。少し雰囲気は違うけれど、住んでいた街とそれほど違うようには感じない。
人々の容姿にも、大きな違和感はない。少し拍子抜けする。
口笛を吹いた。あまりにも気持ちがよい街なのだ。スキップするのは気が引けたが、口笛くらいならいいだろう。
だが、どうも、うまく吹けない。口笛は得意だったはずなのに。