2019年1月5日土曜日

決意より先に

夫婦に礼を言い、赤い鳥を肩に載せて外に出た。左腕の消えず見えずインクのあたりをさする。
ここにしばらく留まるか、どこかへ行くか、まだ決められない。少しこの景色に慣れてみたいとも思うし、もうこんな青銅色の街は懲り懲りだとも思う。

しばらくあてもなく歩いた。足音が響く。この街の人と全く違う足音を立てて歩いていると、酷く惨めなような、不安なような気持ちに襲われた。
さっき食べたばかりのスープの温かさは、心からも身体からも消えて、冷めきった。空を見上げると、青銅色の雲がぽっかりと浮かんでいる。大きく息を吸った。
「こちらに御座します、消えず見えずインクの旅券を持つ旅のお方を然るべき儀式で送る者はおらぬか!」
赤い鳥が大音量で啼いた。