「静かな場所にご案内しましょう」と、声を掛けられた。
ハッとするほど美しい人だったが、ひき肉を捏ねるような声だった。
小さなビルの一室に案内された。古いホテルの客室のようだ。
ベッドと小さなテーブル。シャワールームもある。十分過ぎるほどの部屋だ。
ティンパニーの水音のシャワーを浴びた。身体はさっぱりしたが、まだ頭は音に混乱してズキズキと痛む。
「よく眠ってください、前の街でも、元の街でも、ほとんど寝ていないのでしょう?」
と、美しい人は訳知り顔で言った。不快なはずの声が温かく心に染み渡る。
「ぐっすりと眠れば、この街の音にも少し慣れるはずです。何時間でも、何日でもこの部屋をお使いください」
多くの訊きたいことがあったが、もう瞼は閉じかけていた。
「隣の部屋にいますから、心配しないで……」