夜の空中散歩は静かだ。あのうるさい鴉もねんねの時間だし、ジャンボジェットだって少しは遠慮するのかおとなしく通り過ぎる。
ぼくはペダルをキコキコ漕いで馴染みの箒星を訪ねる。自転車に翼をくっつけただけの乗り物に乗って、よくここまで来られるねぇ、と箒星たちは笑う。
けれど、僕が飛行秤をリュックサックから取り出すと、箒星たちはそわそわし始めるんだ。
飛行秤は質量ではなくて、箒星の箒の美しさを計測する、と箒星は思っている。本当のところはよくわからない。
僕がイリジウムの分銅を飛行秤の左の皿に置くと、箒星は神妙な顔で右の皿に腰掛ける。飛行秤が揺れる。箒星の箒もさらさらと揺れる。僕はこの瞬間が一番美しいと思う。
ジョアン・ミロの絵のタイトルより