懸恋-keren-
超短編
2009年2月24日火曜日
Raindrops
雨の晩はつまらないと尻尾を切られた黒猫は思っていた。
月が出ていないから、少女は出かけたがらない。黒猫も身体が濡れるのは嫌いだ。
しかし、背の低いコルネット吹きだけは違った。
夕焼け色の傘を肩で差し、器用にコルネットを吹く。雨音を伴奏者に仕立てあげ、いつもにまして切ない調べを奏でるのだった。
人の少ない通りにコルネットの音色が染み渡るのを、黒猫は雨の当たらないビルディングの階段で聴いている。
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