2009年2月18日水曜日

ヌバタマの愚痴

迷子の仔猫の声が聞こえたような気がした。
声を辿って行き着いたのは、古ぼけた雑貨屋のショーウィンドウだった。
ショーウィンドウの中には、硝子で出来た猫の置物があった。
物に話し掛けられてロクな目にあったことはない。立ち去ろうとすると、やはり硝子猫は話し掛けてきた。投げ遣りに答える。
「あぁ。この目はエメラルドの緑だ」
取り替えて欲しい? 冗談じゃない。硝子の目玉なんて、御免だ。
硝子猫の甲高い懇願の声がいつまでも追い掛けてきた。

「羨ましいかったんだろうよ、嫉妬というものだ」
とナンナルは言う。
月はわかったふうな顔をして、今夜は満月だ。