尻尾を切られた黒猫の、かつて尻尾があった箇所は傷口が生々しい。つい数日前に切られたような状態である。
「そのお尻、痛そうね。舐めてあげるわ」
行き会った雌猫にしばしば声を掛けられるが、黒猫にはありがた迷惑でしかない。
「……構わないでくれ」
つれない黒猫の態度は、界隈の野良猫たちに評判がよろしくない。
「ヌバタマ、今の猫と何話してたの?」
〔コンバンハ、と〕
「本当に? あの猫、機嫌が悪くなったみたいだったけど」
きっと少女の手の中にある尻尾にも緊張が走ったのだろう。
傷口が塞がっては困る。いづれ尻尾は戻るのだから。