もしも男の子だったら、とよく考えた。
本当に男の子になりたいわけじゃない。
女の子の世界はダサくて男の子の世界は素敵だからだ。着せ替え人形よりプラモデル、スカートよりジーンズのほうが、魅力的なだけ。それが真に似合うのは男の子だけだと思っていた。だから、男の子になることを夢想した。
本物の男の子は、わたしのジーンズを見て寄ってきた。
「それ、ピンテージの復刻モノ?すごい!いいなぁ」
本物の男の子は、さすが話がわかる。
だけど、もしわたしが男の子だったら、彼の笑顔にときめかない。彼の笑顔がまぶしいのは、わたしが男の子じゃないからだ。
彼の笑顔をまぶしいと感じることのほうが、ジーンズの話で盛り上がることより、うれしい。
その日から「もしも」を考えるのは止めた。