なにやらキラキラと光るものがあるので、川へ降りていった。
キラキラの正体は、蝶だった。羽を広げて、ぺたんと浮いている。鱗粉が周りの水面にもやもやと広がっている。
「そんなところに浮かんでいたら、羽が濡れて動けなくなってしまうでしょう?」
とわたしが言うと
「こうして空を見上げながら、漂っていたいのです」
と天から降るような声で答えが返ってきた。
「そんなに気持ちがいいなら、わたしも真似をしてもいい?」
わたしは、服を全部脱いで川に浮かんだ。川の水は冷たい。乳首がきゅっとかたくなる。
身体の力を抜いて浮かぶのは、なかなか難しい。蝶がときどきアドバイスをしてくれた。
「その調子です」
やっと空を見る余裕ができた。真っ青かと思っていた空は、鱗粉を撒き散らしたようにキラキラしていた。
「空ってこんな色だったのね」
蝶の返事はなかった。