懸恋-keren-
超短編
2008年3月1日土曜日
誰よりも速く
「せむかたなきことよ」
と、スカラ君はぼやいた。
ベクトルン嬢の行く先は、いつだって明白だ。スカラ君はベクトルン嬢の前に現れたい。颯爽とライバル達を追い越して、涼しげな顔でベクトルン嬢を迎えて一言いうのだ。
「お嬢さん、お待ちしておりましたよ」
スカラ君が誰よりも速く進むのは容易いことだ。自身の値を上げればよい。それだけだ。しかし、それだけである。
スカラ君は、自分でも何処へ行くか判らない。
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500文字の心臓 第74回タイトル競作投稿作
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