懸恋-keren-
超短編
2008年3月17日月曜日
平面的な出来事
福笑いで腹話術をする男がいた。
地面に広げた福笑いが、男の言葉に合わせくるくる表情を変える。
福笑いと言っても、お多福ではない。フランス人形のような碧眼の美しい少女だ。この少女の声で、腹話術の男がおとぎ話を語る。
男は福笑いを一切触らないのに目や口をかたどった紙片が滑らかに動くから、何か仕掛けがないかと、観客は夢中で福笑いを見る。
いつのまにか、男の横でみすぼらしい格好の女の子が大きな口を開けておとぎ話を朗読しているが、誰も気付かない。
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