眠っているあなたのふとももを撫でていると、手のひらに違和感を感じた。
「芽が出てる……」
それは確かに植物の芽で、瑞瑞しく緑で、つんと立っていて。わたしはそれを育てることにした。
水をやろうと、唾液を流しながら舐めた。
肥料を与えようと、指を噛み切って血を垂らした。
そうするうちに背が伸びる、葉が出る。
あなたが目を覚ます前に花を咲かせて欲しいと、私は願い、只管に舐める。
月の光がカーテンの隙間から差し込んだとき、強い芳香が広がった。白い花がゆっくりと開いた。指で花にそっと触れると、一層強く香りが漂う。
月下香。
「月下香」或いは「チューベローズ」
花言葉は「危険な楽しみ」。