懸恋-keren-
超短編
2008年3月20日木曜日
窓の向こう
箱についた窓を覗きこむと、中は書斎だった。どっしりと重そうな机の上には、万年筆と書きかけの原稿用紙。壁一面の本棚には、厚い本がびっしり詰まっている。その本棚の前で本をめくっているのは、こともあろうに、ウサギだ。丸い鼻眼鏡をかけ難しい顔をして本をめくり、机に戻った。
私が窓に小さなペンライトをあててウサギに合図すると、ウサギは鼻眼鏡をずりおろし、まぶしそうに窓を見やった。
その眼鏡、老眼鏡か。
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