どこからともなくやってくるゾウの行進、それが合図。
地響きと土けむりが収まり現れた市場は、極彩色だ。どんな花畑より色鮮やかで、真夏の太陽より強い陽射し。人々は目を細めながら市場を行き交う。
あんまり眩しいので買い物には鼻が頼りだ。トマトの香り、バナナの香りはもちろん、お札や小銭の匂いも嗅ぎ分ける。皆、品物やお金を鼻にこすりつけて大声で笑い合う。
「ジャガイモだね!」
「あぁジャガイモだ!」
日が傾き始める頃、仔ゾウが一頭、市場を走り抜けていく。店はバタバタと畳まれ、お客は逃げるように家路につく。
跡形もなく、ゾウ市場。
《蛇腹姉妹「ゾウ市場」のために》