懸恋-keren-
超短編
2007年7月10日火曜日
七月十日 舐めたかったのに
降ったり止んだりの雨の中、ウサギは傘も差さずにやってきた。
ランニングシャツのおじさんを連れて。
「このおじさん、雨を飴に変えるというのだ」
おじさんは雨の中、なにやら小さなコンピュータを操作している。
「何の飴がいい?」
おじさんが言う。
「ミルク味じゃなければ、なんでもいい……でもさー飴が降ったら痛いよね」
私の言葉に構わず、おじさんはコンピュータを弄っている。
「ほら落ちて来た」
オレンジの飴玉は落下傘を付けてふわりゆらりと落ちてきて、ウサギの口に墜落した。
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