懸恋-keren-
超短編
2007年7月14日土曜日
七月十四日 台風
台風の雨を運ぶ小人が、ウサギの腹の上で寝ている。
二千人くらいの小人が、ウサギの毛皮にしがみついてすやすやと。
この人たちが雨を地下深くの小人街に運ばないと、この町の川は氾濫してしまう。
台風の雨は小人にとっては大事な水源で、彼らが台風を利用するおかげで
なんとか大災害にならずに済んでいたのだ。
こんな大きな台風が7月に来るなんて珍しいから無理矢理起こされたようで眠くて仕方がないんだ、少し休ませてほしい、とウサギを訪ねてきた時に小人たちは言っていた。
小さな寝息を聞きながら私はため息をつく。
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