妹は話すのが極度に苦手な子供だった。ひとりで何時間も無言のまま人形遊びをするような子だった。
十二才の時、彼女は糸を紡ぐことを覚えた。
糸車を廻すと、妹は饒舌になった。
彼女は何も喋らない。糸車が喋るのだ。
糸車の助けを借りて初めて言葉を紡ぐことができりようになった妹は、どんどん糸を紡いだ。部屋は糸で一杯になったけれど、妹の気持ちがそのまま現れた糸は、売ることができない。太かったり細かったり、強かったり細かったり、品物にはならないのだ。
「お姉ちゃん。あのね、」
妹の糸車の声がして私は振り向く。
妹は糸と言葉を紡ぎ続ける。
*紡*