2006年7月27日木曜日

切れるもの

鼻緒が擦れて、血が滲んだ。下駄なんか履いて長い時間歩くからだ。歩かせるからだ。
「歩けん」
彼はしゃがみこんで、私の左足に顔を近づけた。
「血が出てる」
「だから歩けない。痛い」
本当はそれほど痛くなかった。負ぶってくれやしないかと、少し期待している。
だけど彼は、親指と人差し指の間をペロペロと舐めだした。
なんだか彼の頭を殴りたくなった。殴ってやろうかどうしようか、考えているうちに、足の傷はすっかり治ってしまった。
私の足が治ると、今度は下駄を舐めだした。切れた鼻緒もペロペロと舐めて、すっかり直してしまった。おまえの涎は何で出来ているのだ。
「汗と血の味がした」
ニヤリと笑う。今度こそ本気で殴りたい。

*緒*