2006年7月29日土曜日

雑巾を巡る旅

縫い目を見て、すぐに姉のものだとわかった。姉が縫った雑巾には筆跡のような曖昧だが確固たる特徴があった。
姉の雑巾は、いつの間にかあちこちで使われていた。どのような経緯で人様に渡ったのか今となってはわからないが、全国どこに行っても姉の雑巾を見つけた。汚れもよく落ち、丈夫で長持ちすると必ず言われる。誇らしげに教えてくださる雑巾の持ち主に、私は苦笑を隠せない。
実際長持ちするのだ、20年も使い続ける雑巾がどこにあるのか。
一針づつに失恋の痛みと怨みを込め続けた姉さん。あなたは一体いくつの恋をしてきたんだ?
五十ニ枚目の雑巾を手、天に問い掛ける。

*縫*