「お昼にしましょう!」
先生の掛け声を聞くや否や、各々好きな場所でお弁当を広げはじめる。
わたしもちょっと大きな石に座り場所を見つけてリュックを降ろした。
あれ?
リュックの左脇にある小さなポケットが膨らんでいる。
ここにはちり紙しか入れていないはずなのに。
「あ゛~窮屈であった!」
「誰?いつからここにいるの?」
「見ればわかるだろう、鬼だ」
「でも、小さい…」
「鬼にもいろいろいるのだ。人間もそうであるように。」
鬼は死に場所を探しに来たのだ、と言った。
鬼は若く見えた。角は立派だし、赤い肌はスベスベだ。それでも寿命なのだという。
運んでいただき有り難う存じます、と最後に深々と頭を下げ歩きはじめた。
鬼は、学級委員の田口くんに踏まれて死んだ。
わたしは絶叫した。でも、声にならなかった。