懸恋-keren-
超短編
2004年8月28日土曜日
気合いを入れろ
ぼくのポケットにはナイフが忍ばせてある。
刃はむきだしのままだ。
緊張したとき、頑張らなくてはいけないとき、ぼくはポケットの中のナイフをぐっと握りしめる。
手に汗握る代わりに刃を握る。
「さあ、行くぞ。大丈夫、きっとうまくやれるさ…」
ぼくは一歩踏み出した。青信号の横断歩道。
渡り終わるまでナイフは握ったままだ。
でも手を怪我することはない。
ただ掌に錆が付くだけ。
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