懸恋-keren-
超短編
2004年8月5日木曜日
相続
祖父が死んだので着物を整理をする。
こういうのはあまり時間をおかずにサッサと済ませるのがいい。
夏物の入った引き出しを開けると真っ先に甚兵衛が出てきた。
そういえば、夏になるとよく着ていたっけ……。
「ベェーベェー」
甚兵衛が鳴いた。
左前についたポケットからピンクのヤギがひょっこり出てきた。
鳴いていたのは甚兵衛ではなくこのヤギだったか。
ピンクでチビのクセになかなか立派な角をしている。
「ベェーベェー」
私は迷うことなくピンクのヤギを自分のジーンズのポケットに押し込んだ。
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