少女が公園で遊ぶ間、尻尾を切られた黒猫もまた、公園で遊ぶ。
少女がブランコで遊べば、黒猫は滑り台の上に丸まってそれを眺める。
黒猫が植え込みの中を散歩すれば、少女はそれを追い掛けまわす。
そんな時、月は黒猫を抱きベンチに腰掛けて少女を見守っている。膝の上の黒猫は黒猫ではなくカボチャだということに、月はなかなか気が付かない。少女が笑う。
「ナンナル、またカボチャを抱いてる」
「ヌバタマが何やら術を使って騙すのだ」
と月は言うが、公園に行く度に手頃なカボチャが落ちているから、黒猫はカボチャが月を惑わしているに違いないと考えている。
2009年1月30日金曜日
2009年1月29日木曜日
2009年1月28日水曜日
賑わいの町
通る人すらいない商店街、目を閉じれば俄かに活気づく。
耳を澄ませて歩く。右手に八百屋のダミ声がする。近寄っておじさんに声を掛けた。
「りんごをください」
右手に袋を握らされ、また声を頼りに歩きだす。
店先でお客とお喋りに夢中の洋品店のおばさんの声を辿る。セーターと、新しいシャツと靴下を見繕ってくれと頼む。
「きっとよく似合うよ」とおばさんに紙袋を渡された。
それから最後は花屋さん。これは耳より鼻がいい。迷うことなく到着し、バラの花束を、と頼む。
花束を抱えて花屋を出るともうそこは商店街の終わりだ。目を開けると喧騒が消える。振り返ると、やはりシャッターの閉まった、がらんどうな通りだった。
なぜかバラの花束がずしりと重たい。
耳を澄ませて歩く。右手に八百屋のダミ声がする。近寄っておじさんに声を掛けた。
「りんごをください」
右手に袋を握らされ、また声を頼りに歩きだす。
店先でお客とお喋りに夢中の洋品店のおばさんの声を辿る。セーターと、新しいシャツと靴下を見繕ってくれと頼む。
「きっとよく似合うよ」とおばさんに紙袋を渡された。
それから最後は花屋さん。これは耳より鼻がいい。迷うことなく到着し、バラの花束を、と頼む。
花束を抱えて花屋を出るともうそこは商店街の終わりだ。目を開けると喧騒が消える。振り返ると、やはりシャッターの閉まった、がらんどうな通りだった。
なぜかバラの花束がずしりと重たい。
2009年1月26日月曜日
2009年1月25日日曜日
2009年1月24日土曜日
教会
少女は石造りの古い教会に入ってみたくて仕方がない。少女が生まれるずっと以前に閉鎖された教会である。人気のない教会は薄汚れ、町の中心に在りながら暗く重苦しい雰囲気を漂わす。だが、同時に堂々とした威厳を今も尚感じさせるのだ。
どうやら少女は、廃墟だからこそ、その存在に圧倒され、魅了されているらしい。黒ずんだ石段を大股で昇り、開かないとわかっている扉にしがみついて中を覗きこむ。何度覗こうと何も見えないことも、もちろんわかっている。
尻尾を切られた黒猫は、一度だけ教会に入ったことがある。裏の通風孔を通って中に入ることができたのだ。
外から覗いた時には、真っ暗だったはずなのに、教会の中は輝きに満ちていた。大勢の天使に迎えられ、黒猫は自由に中を散策することを許された。
真っ白なマリア像に見守られながら、広い教会内を歩いた。天井はひたすらに高く、どんな小さな音もよく響く。黒猫は生まれて初めて己の足音を聞いた。
まもなく黒猫は、黒いものが己だけであることに気付く。こんなにもまばゆい光の中にいるのに、そこに影がないのだ。
〔ここにあるのは、まやかしの光だ〕
「中は真っ暗だよ?」
見えないから惹かれることもあるのだ、と黒猫は考える。
どうやら少女は、廃墟だからこそ、その存在に圧倒され、魅了されているらしい。黒ずんだ石段を大股で昇り、開かないとわかっている扉にしがみついて中を覗きこむ。何度覗こうと何も見えないことも、もちろんわかっている。
尻尾を切られた黒猫は、一度だけ教会に入ったことがある。裏の通風孔を通って中に入ることができたのだ。
外から覗いた時には、真っ暗だったはずなのに、教会の中は輝きに満ちていた。大勢の天使に迎えられ、黒猫は自由に中を散策することを許された。
真っ白なマリア像に見守られながら、広い教会内を歩いた。天井はひたすらに高く、どんな小さな音もよく響く。黒猫は生まれて初めて己の足音を聞いた。
まもなく黒猫は、黒いものが己だけであることに気付く。こんなにもまばゆい光の中にいるのに、そこに影がないのだ。
〔ここにあるのは、まやかしの光だ〕
「中は真っ暗だよ?」
見えないから惹かれることもあるのだ、と黒猫は考える。
2009年1月23日金曜日
ねぇ
「ねぇ」
きみからの電話に少々縮みあがる。あんなことをして怒ってないだろうか。感傷的になっていたのは確かだけど、勢いだけじゃなかった。だって
「気紛れだったなら、そう言って。酔っ払った勢いで、という言い訳も今だけ受け付けます。そうじゃないなら恋の槍とか、キスの雨とか降らせちゃうんだからね。覚悟シロ」
彼女が電話越しにあっけらかんと言うから、そんなの降るもんかと笑いながら窓から空を見上げてみる。
ホントだ。雲からハート型の槍がぶら下がって今にも落っこちそうになってら。早く降っておいで。
きみからの電話に少々縮みあがる。あんなことをして怒ってないだろうか。感傷的になっていたのは確かだけど、勢いだけじゃなかった。だって
「気紛れだったなら、そう言って。酔っ払った勢いで、という言い訳も今だけ受け付けます。そうじゃないなら恋の槍とか、キスの雨とか降らせちゃうんだからね。覚悟シロ」
彼女が電話越しにあっけらかんと言うから、そんなの降るもんかと笑いながら窓から空を見上げてみる。
ホントだ。雲からハート型の槍がぶら下がって今にも落っこちそうになってら。早く降っておいで。
登録:
投稿 (Atom)