彼女の髪には細かな水玉がたくさんついている。彼女の動きに合わせて艶やかな黒い髪を水玉たちが滑る。彼女の傍にいると、山の川の匂いがする。
「母に逢いに行くから、一緒に来ない?」
と誘われて、行くことにした。彼女の故郷の話はいつもおもしろかったから。
険しい山道も彼女は軽々と歩いた。「今日はお父さんの機嫌がいいみたい」といいながら、歩きやすい場所を示してくれたので、僕もそれほど苦労せずに歩くことができた。
水音が近づくにつれ、彼女の足取りはますます軽くなった。
「ただいまー!」
彼女の声は滝の轟音にかき消される。
裸になり滝壺に飛び込みはしゃぐ彼女を見守りながら、彼女と同じ匂いの滝の飛沫を浴びて、深く呼吸をする。
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