懸恋-keren-
超短編
2009年4月24日金曜日
小さな海
恋人が海で拾ってきたと巻き貝の貝殻をくれた。
小さな出窓の窓辺を片付け、一番美しく見えるように置く。
翌朝、僕は波の音で目覚めた。窓辺には、小さな海があった。
天気が悪ければ波は高くなり、良くなれば穏やかになった。一日部屋にいると潮が満ち干くのがよくわかる。紛れもない海が、僕の部屋にはある。
恋人には、まだ海を見せていない。遠くの国へ旅立ってしまったから。
(175字)
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