懸恋-keren-
超短編
2009年4月25日土曜日
目前に壁がなくとも
少女が両手を使いたい時、黒猫の尻尾は少女の手首に巻き付く。
今日、少女はオニの家で編み物を習っている。
「キナリちゃん、とっても器用。上手ねぇ」
オニがニコニコと見守る傍らで、少女は夢中で編み棒を操る。
尻尾は退屈で眠たくなる。力が抜け、手首から落ちそうになると、少女は尻尾をギュウギュウときつく手首に巻き直す。
留守番をしている黒猫は思わず後退りしてしまう。
(175字)
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