2006年12月29日金曜日

夢みたいな注射

風邪をひいて病院へ行くと、いつもの老医師がいなかった。
「先生は?」
「マゴと遊びに行った」
とウサギがこたえる。
「じゃあ、なぜ休診にしないの?」
ウサギはニヤリとして
「私が診察を任されているからだ」
と宣った。
ウサギは世間話をしながらコーヒーを沸かし、それを注射器に詰めた。
私は背筋が凍りついた。
「いや!コーヒーなんか注射したら!やめて!だれか助けて」
私は叫び暴れたが、ウサギは素早く馴れた手つきで注射針を私の二の腕に挿した。

それからどうやって家に帰ったのか、まるで覚えていない。
気が付くと、湯舟で鼻歌を歌っていた。風邪はすっかり良くなっていた。
ウサギにコーヒーを注射されたのは、夢だったのだろうか。
けれども五日経つ今も二の腕にはぷっくりと注射の跡が残っているから、夢ではなかったみたい。でも、その赤い注射の跡を指先で撫でると、なぜか夢心地になるからやっぱり。