懸恋-keren-
超短編
2006年12月20日水曜日
視線で味わう
アリスは沸騰したコーヒーを好む。
僕は毎朝コーヒーを入れると、アリスの分を取り分け小鍋でぐつぐつと沸かさなければならない。
コーヒーカップの中でなお、熱い泡を立てているコーヒーをアリスは硝子の眼玉で見つめる。
昼前に冷めたコーヒーにそっと口を付けると、コーヒーはなんの味も香りもない茶色い液体になっている。
僕はこうしてアリスの残したコーヒーに口付ける瞬間が一番興奮する。
たぶん、これは彼女の体液だから。
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