2005年12月27日火曜日

代償

「びしょびしょじゃないか。どうしたんだ?」
というと妻は困った顔した。
「だって……」
リビングが水浸しなのだ。
彼女が格闘していたのは、娘が作ったてるてる坊主である。
明日は遠足だというのに、昨晩からの雨が止みそうにない。
娘は真剣にてるてる坊主を作っていたそうだ。
ところが、どうしてもひっくり返って頭が下になってしまうというのだ。
妻は娘が寝てからも、糸を付け直したり、頭の詰め物を減らしたりと手を尽くした。
ようやく安定したてるてる坊主が出来上がり、窓際に吊すと途端に部屋の中で雨が降ったという。
「でも、うちの中で降っている間は、外の雨は止んでいるの」
妻の指は、逆さまにてるてる坊主を摘んでいる。
こうしていれば部屋の中では雨は降らないが、外はザアザア降りだ。
「どうしよう……遠足」
私は妻の手からてるてる坊主を取り上げ、風呂場に向かった。
私はてるてる坊主をシャワー掛けに吊し、入浴した。
雨とシャワーに降られたティッシュペーパー製てるてる坊主は、無残な姿で床に落ち
恨めしそうに私を見上げた。