2005年12月15日木曜日

雨の日のおまじない

「ほら」
と雨の中駆け寄って来た彼女が手を開くと雨粒小僧がいた。
この同級生は、どうして僕にコレを見せるのだろう、と訝しがりながら
はじめて見る雨粒小僧にしばらく見とれていた。
小僧は不貞腐れた顔で胡座を掻いている。
「こいつの頭、撫でてみ」
と言われて僕は恐る恐る人差し指で小僧の頭を撫でた。見る見るうちに小僧の表情が和らいだ。
彼女は優しい顔になった雨粒小僧を左耳にグイグイと突っ込んでしまった。
「ナニしてんだよ?」
「これでキミの声がいつでも聞ける」
同級生はバシャバシャと水溜まりも避けずに駆けていった。