煙るような雨だ。あまりに細かい雨で傘は何の役にも立たない。髪や服がじっとりと重たく、しみじみと寒いことだけが、雨の証。
さっきから僕の後をつけている人がいる。
何度か振り向いたけれど、煙雨が視界を悪くしているから顔は見えない。
思い切って回れ右をした。近づいて「何か僕に用ですか」と言ってやろう。
少し歩を速めて見たが、なかなか出会わない。
相手もこちらを向いて歩いているのに。
早く顔を見たくて小走りになる。
でも、距離は縮まらない。
息が上がるほど走っているのに、景色は変わらない。僕が吐く息よりも白く煙る雨のせい。
雨はまだ、止みそうにない。