2005年12月7日水曜日

表情

銀杏の葉がすっかり落ちて、道が眩しい。
そこを目の前にして、僕は立ち止まる。昨日、雨が降ったから。
人に踏まれ雨に濡れた銀杏の葉に、僕の恋人は飲み込まれた。ちょうど一年前。
ぬぼぬぼ ぬぼ ぬぼ
一瞬前まで「黄色い道だよ」とはしゃいでいた彼女は黄色い道に沈んで消えた。
ここを通れば、彼女に会えるのかもしれない。
だけど、僕は行かない。
沈んでいく彼女の表情は、見たこともないくらい恍惚として醜かった。
僕はあんな顔をさせられないし、見たくもないから。
僕はくるりと向きを変えて歩きはじめた。
空が青い。