ポニーテイルの山口さんは、いつも大きなリボンを付けていた。
「きれいなリボンだね」
僕の真っ赤な顔を見ると少し驚いた顔して
「ありがとう」
と言った。
「でもね。これ、リボンじゃないんだ。ちょうちょなの」
山口さんは屈んで頭がよく見えるようにしてくれた。
ピンク色の蝶が、静かに羽を揺らめかせながらとまっていた。
「ね?」
その夜、山口さんはいなくなった。町内総出で捜したが、何も見つからなかった。
「虫捕り網をもった男にかどわかされた」
と、目撃者は言った。それ以上の手掛かりはなかった。
翌日、山口さんは帰ってきた。服も汚れていなかったし、怪我もなかったが、ポニーテイルにリボンはなかった。
山口さんは、僕の顔を見て、泣いた。いつまでも泣いた。