「これは良い卵、これは悪い卵」
とナタ子は言う。
「どうして?どこが違うの?」
「これは間違った卵、これは正しい卵」
ナタ子は「悪い卵、間違った卵」を庭に捨てる。
「止めて!」
私の制止に構うことなく、卵が庭で割れていく。
ほとんど手入れされていない空き地のような庭のあちこちに卵の残骸。
10個のうち残ったのはたったの四個。
「これでホットケーキを作るのです」
ナタ子は[ナマムギナマゴメナマタマゴヤキムギヤキゴメヤキタマゴ♪]と早口言葉をハミングしながら調理を始めた。
翌日、ナタ子の家の庭には六輪の真っ赤な薔薇が咲いていた。