昨日からペットのカニゾウ(♂六才)がヒーターの前から動こうとしない。
「ちょっとカニゾウ!掃除するんだからどいてよ」
ただでさえぐうたらデブ猫だったがいよいよ動かない。
「んもう!」「に゛ゃ」
私はカニゾウをむりやり持ち上げた。
「カニゾウ?なにこれ?たまご~?あんたオスでしょ。その前に哺乳類!」
カニゾウは知らん顔して去ろうとしている。
「待ちなさい。どーしたのこのたまご。あんたがあたためても孵らないと思うんだけど。もう死んじゃってるかもしれないし」
こちらに戻ってきたカニゾウは私と一緒になってたまごを見つめている。
カニゾウはゆっくりと前足でたまごを撫でる。私にパンチを食らわす時とは大違いだ。
「あ!」
たまごにヒビが入った。
「え?うそ。産まれる?」カニゾウは私に自慢げな顔をしてみせる。
「すごいよ!カニゾウ!お母さんじゃん。あれ?お父さんか?まあ、どっちでもいいや」
私は生まれてきたトリケラトプスを抱えてカニゾウを労う。奮発して高級ネコ缶をご馳走してやるぞー。