2004年6月1日火曜日

ボロボロ

茶けた紙が風に舞いながらこちらに近付いてくる。
空中で掴み取り、思わずニヤリとした。手を伸ばした瞬間、福沢諭吉が見えたのだ。
拳を開くと、それは真ん中から破れかけ、角はなくなり、手垢に塗れ、毛羽立ちもひどかった。
壱万円札としての威厳は完全に失われている。
 家に帰り、庭に小さな穴を掘った。満開の椿の根元に。
そこへ前日に生を終えたハムスターを壱万円札だった紙で包んで埋めた。
 埋め跡を隠すかのように落ち、色褪せていく椿と涙


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500文字の心臓 第38回タイトル競作投稿作
○2△1