雨上がりの朝、アスファルトはまだ黒く濡れている。
駅から学校までの道、ぼくは下ばかり見て歩く。
隣でユウタがきのうのテレビの話をしている。
適当に相づちを打てばいい。こいつは喋らせておけば機嫌がいい。
ぼくは下ばかり見て歩く。
すぐ前には隣のクラスの女子が三人。
ユカとユイとユウ。
朝からやたら楽しそうに喋りながら歩いている。
ぼくは下だけを見て歩く。
ところどころに出来た大小の水溜まり。
ユカがヒョイと跨ぎ、ユイがエイッと飛び越え、ユウがスッと渡る。
ぼくはその瞬間を見逃さない。
水溜まりにだけ映る影。
いつもは見えないものを少しだけ、見せてくれる。