懸恋-keren-
超短編
2004年6月8日火曜日
shadow broker
「影はいらんかね?」と靴磨きの男は言った。
靴磨きがたいていそうであるように、男の顔や手や服には靴墨が染み込み、表情を読み取るのは難しい。
オレは「間にあってます」とだけ答えた。
「いい影がいるんだけどなァ。きっと気に入るよ」
オレは時間がないなどと言い訳をして靴磨きを終わらせ、足早に歩きだした。
「いい影?どんな影?気に入るだって?誰が?オレが?それともオレの影が?」
足元を見ても影は答えない。
明日またあの靴磨きの男に会えるだろうか。
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