懸恋-keren-
超短編
2004年6月6日日曜日
御機嫌伺い
「あれ?どうした?」
なんとなく気になって僕は友達にそう声を掛けた。
「いや、オレはいつも通りだよ」
そう言って笑う彼の顔は確かにいつも通りだ。
「そうか、よかった。こっちへ向かってくる時、なんとなく元気がないように見えたんだ。なんでだろう」
「おまえ、よく気づいたな。元気がないのは、オレじゃなくて影だよ。昨日の雨で風邪をひいたようだ」
彼の足元に向かって「おだいじに」と言ったら、影の影はピースサインをして見せた。
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