2004年6月1日火曜日

中井の独白

拙者は「中井自動車」の会長である。
創業は祖父。拙者は会社を継ぐために幼少から勉学に励んだ。
放蕩癖があった父はそんな拙者を見て笑っていた。もう少し遊ぶことも大事であると。
そんなことにも耳を貸さず、学校を出た拙者はまじめに働いた。社長になることは皆承知済みであるから、妬みもあった。
会長になったのは33才の時である。社長を通り越して会長になった。父が急死したためである。
三太が拙者の家に忍びこんだのは、拙者が会長になって三年三ヶ月と三日たった午前三時のことであった。
拙者が声を掛けたら驚愕し、付近にあった花瓶を割った。
その時の三太は大変な痩躯だった。
故に夜食を与えた。
三太は夜食を食べながら泥棒稼業がうまくない、と漏らしていた。
拙者は退屈な会長生活の刺激になると考え、三太の仕事を補佐することを決定した。
「拙者に手伝うことがあるか」と言ったら三太は泣いて喜んでいた。
これが拙者が大泥棒になった経緯である。